「成年後見関係事件の概況 (令和2年1月~12月)」が公開されました
最高裁判所事務総局家庭局より「成年後見関係事件の概況」(令和2年1月~12月)が公開されましたので、ポイントを紹介します。
- 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申し立て数は、37,235件で昨年度比3.5%増と相変わらず微増です。ただ特筆されることは、分母数が少ないながらも、保佐開始の申立件数が、前年対比11.6%増、補助開始の申立件数はが、前年対比30.7%増となったことです。一方、任意後見監督人選任の申立件数は前年対比1.3%減で、ここ数年減少しております。
「成年後見制度利用促進」の効果で保佐、補助が増加していると考えられますが、任意後見制度の利用が低調なのは気になる点です。 - 申立人と本人の関係については、「市区町村長」が最も多くなり全体の23.9%を占めております。「本人の子(21.3%)」「本人(20.2%)」が続いております。「市区町村長」の申立てが年々増えている背景として、申立てをする家族がいないことが挙げられます。また、対応できている自治体と、そうでない自治体の差が今後の課題と思われます。
- 申立ての動機については、「預貯金等の管理・解約(37.1%)」「身上保護(23.7%)」が多く挙げられ、ここ数年変わっていないようです。
- 成年後見人等と本人の関係をみると、親族が選任されたのは全体の19.7%でした。昨年が全体の21.8%、一昨年が23.2%であり、親族以外の増加に歯止めはかかっておりません。今回から公開された「成年後見人等の候補者」について、親族が成年後見人等の候補者として申立書に記載されている事件は、全体の23.6%(2月~12月)であったことを考慮に入れますと、ある程度親族が選任されていると推測されます。
身上保護を重視するとされた後見制度利用促進に基づき、「親族が候補者と申請された場合、例外的な事由がない限り親族を選任する。」とされておりますが、地域に中核機関等が設置されていることが要件となっておりますので、中核機関等の設置が推進されることが期待されます。 - 今回から「成年後見監督人等が選任された事件数」が公開されました。後見人等の開始事件の内、1,138件(3.3%)でした。この件数は、後見等開始と同時に成年後見監督人が選任された事件数であり、後見等開始の後に選任された事件は含まれておりません。成年後見監督人等に選任された人は、弁護士(44.3%)、司法書士(43.1%)と両専門職で87%が占められており、続いて社会福祉協議会(9.0%)でした。
- 成年後見制度の利用者数は、232,287人で前年対比3.5%増となっています。このうち保佐の利用者数は前年対比9.3%増(42,569人)、補助の利用者数は12.7%増(12,383人)です。利用者数が増加することに加え、保佐、補助の利用が、今後ますます増えることが望まれます。