成年後見制度事件の概況(令和3年1月~12月)が公開されました
最高裁判所事務総局家庭局より「成年後見関係事件の概況」(令和3年1月~12月)が公開されましたので、概要をご報告いたします。
1.成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の審判申立件数は、39,809件で昨年より6.9%増と対前年度対比の比率は多少ですが増加しました。
ただし、保佐・補助開始の審判申立件数は、それぞれ昨年の比率より減少し、全体の申立て比率と大差ない点が物足りなさを感じます。
また、任意後見監督人選任の審判申立件数は過去5年間ほぼ変わらない状況です。
成年後見関係事件の終局事件(39,313件)のうち認容で終局したものは95.6%、審理期間は2カ月以内が75.4%と、例年とほぼ同じ割合です。
2. 申立人と本人との関係についてですが、「市区町村長」の割合は23.3%と昨年とほぼ変わらない比率です。家庭裁判所管内別での市区町村申立ての比率をみますと、福島、熊本、徳島で割合が高く、いずれも40%を超えております。
また、「本人」の割合は、20.9%と前年とほぼ同じ比率ですが、2年、3年前と比較すると増加しており、早い段階での成年後見制度の利用が促進されていると思われます。
3.本人の男女別・年齢別の割合は、ここ数年、ほぼ同じ割合で推移しております。男性が44.1%、女性が55.9%で、65歳以上の率は、男性が72.2%、女性が86.1%占めております。
開始原因別の割合は、認知症(63.7%)、知的障害(9.6%)、統合失調症(9.1%)、高次脳機能障害(4.4%)の順で、例年と変わっておりません。
4.申立の動機についての割合は、「預貯金等の管理・解約」が32.9%、「身上保護」が24.4%、「介護保険契約」が13.6%と上位三項目は例年と変わりません。
過去4年間の比率と比べますと、「身上保護」「介護保険契約」の比率が漸増しているのは、本人を支援する環境が少しずつ整ってきていることが推測されますし、「預貯金等の管理・解約」の率が減少していることは、金融機関の対応がかわってきているのではないかと考えられます。
5.鑑定を実施した割合は5.5%であり、年々減少しています。(平成26年以前は10%を超えていました。)鑑定期間や鑑定費用の割合は、ここ数年、ほとんど変わっておりません。
6.成年後見人等と本人の関係をみますと、親族が選任された割合は19.8%(7,852件)で昨年(19.7%)とほぼ同じ率です。親族が成年後見人等の候補者として各開始申立書に記載されている事件の割合は、23.9%(9,457件)であることから、親族と記載された候補者が選任された率は、約83%と推測されます。親族が成年後見人等の候補者として申請されるのが意外と少ないと感じました。
市民後見人の件数は320件(1.0%)と過去4年間ほぼ横ばいです。
また、社会福祉協議会を含む法人の件数を推定しますと、4,770件(12.1%)でここ数年少しずつですが割合が増加しております。
7.認容で終局した後見開始、保佐開始、補助開始事件のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人)が選任された件数は、1,174件で全体の約3.2%でした。選任の内訳は、弁護士(45.0%)、司法書士(40.4%)、社会福祉協議会(10.7%)がほとんどです。