机の上の葉

自筆証書遺言は、ご自分が用意した紙とペンがあれば、自由に作成できます。縦書きでも横書きでも構いませんが、記載には法律で決められたルールがあります。また、筆記用具はえんぴつなどは使わずに、万年筆とか消せないボールペン等を使います。

■自筆証書遺言記載のルール

  • 全文を本人の自筆で書かなければなりません。一部でも代筆があると無効です。
  • 遺言書を書いた年月日を自筆で記載します。「〇年〇月吉日」といった書き方は無効となります。
  • 姓名を自筆で署名します。二人以上の者が一緒に署名すると共同遺言となり、法律では禁止されており無効となります。
  • 必ず押印をします。認印でも有効です。
  • 加除など遺言書の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記してそこに署名し、かつ、その変更場所に印を押さなければなりません。訂正方法の間違えや漏れがありますと、訂正した箇所は無効となり、加除変更されなかったものとして扱われます。
  • 相続財産の目録を添付することで、その目録については自書しなくても有効となりました。(平成31年1月13日以降に作成された自筆証書遺言が有効です)
  • 自書する代わりに、財産目録を本人がパソコンで作成することや、本人以外の人が作成することもできます。また、不動産の登記事項証明書や預貯金の通帳の写しなどを添付することも有効となります。
  • 添付書類には、それぞれに必ず署名と押印をしなければなりません。(自書によらない記載が両面にある場合は、両面に署名、押印します)
  • 自書によらない財産目録は、本文が記載された自筆証書とは別の用紙で作成されなければなりません。
  • 本文と財産目録の各用紙の間に契印をすることや、遺言書全体を編纂する必要はありません。ただ、遺言書の一体性を明らかにするために、契印や編纂は望ましいとされております。

■自筆証書遺言記載のアドバイス

  • 書き始める前に、まず、自分の財産を確認し、そして、だれにどの財産を相続させるかを決めます。
  • トラブルを防ぐため、遺言者の署名は戸籍の姓名を記載し、相続人の名前も同様に戸籍の姓名で記載します。(遺言者名は、通称、雅号、ペンネームなどの記載も有効とされております。)
  • 本文は、「金額は多く与える」などのあいまいな文言は避け、また、「渡す」「譲る」などの表現ではなく、「相続させる」「遺贈する」と明確に記載します。(「相続させる」と「遺贈する」は遺産手続きに違いがあります。(※1))
  • 不動産を自書する場合は、土地と建物は別々に記載し、所在地は登記簿事項証明書通りに記載しなければなりません。
  • 預貯金などを自書する場合は、金融機関と口座番号を記載します。
  • 「附言事項」には法的効力はありませんが、遺された人に遺言者の想いを伝えることができます。
  • 遺言執行者を指定し、遺言執行者の職務内容を記載することで、相続手続きはスムーズに進みます。
  • 自筆証書は偽造、変造される恐れがありますので、遺言書を封筒に入れ、糊付けをして封印することが大事です。
  • 保管場所は遺された家族が分かるように、伝えておくことが大切です。

●(※1)「相続させる」と「遺贈する」の相続手続きの違い

遺言書で「相続させる」の表現は法定相続人だけに使い、「遺贈する」は、相続人やほかの人に使います。

〇借地権の相続手続き

「相続させる」遺言の場合は。賃貸人の承諾は必要としませんが、「遺贈する」遺言の場合は、賃貸人の承諾が必要となります。実務では、「相続させる」でも賃貸人の承諾を得ることが無難です。

〇農地の相続手続き

「相続させる」の遺言は、農地法の許可は必要としませんが、相続を知ってから10か月以内に農業委員会への届け出が義務付けられました。「遺贈する」は、法定相続人以外の者に特定遺贈の方法で指定すると、農地法の許可も必要となり、農業者でないと取得できません。


■遺言を執行するためには検認が必要です

  • 遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認(※)を請求しなければなりません。相続人等の立ち合いのもと、封印のある遺言書は開封し、遺言書を検認します。
  • 申し立てる家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地です。申立書と遺言者の出生から死亡までの戸除籍謄本等や相続人等の戸籍謄本などの書類を提出します。
  • 申立人以外の相続人の立ち合いは、各人の判断に任されており、全員が揃わなくても検認手続きは行われます。
  • 遺言を執行するためには、遺言書に「検認済証明書」が付いていることが必要です。

(※)検認とは、家庭裁判所で相続人や利害関係者の立ち合いのもと、遺言の存在やその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にする手続きです。法務局による自筆証書遺言を保管する制度を利用した場合は、検認の必要はありません。


■自筆証書遺言書保管制度が創設されました

自筆証書遺言を法務局で保管する制度が創設されました。自筆証書遺言のルールに従い、法務省で定める様式で作成した遺言書を、自ら法務局(遺言書保管所)に持参し、保管申請をします。相続人は、法務局(遺言書保管所)で遺言書の確認ができます。


自筆証書遺言は、方式や記載の方法に不備があると、無効となってしまいます。また、遺言書の存在を誰も知らないと、遺言者の想いは伝わりません。

せっかく書いた遺言書が無駄にならないように、自筆証書遺言を作成するときは、当事務所にご相談ください。